(2)問:病院で薬をもらうとカゼは早く治りますか?答:いいえ、そんなことはありません。

「薬を飲まないとかぜは治らない」と思っている方が多いかもしれませんが、それは大きな間違いです。医者なら誰でも知っていることですが、かぜはほっとけば治ります。
話せば長いことになります。いわゆる「かぜ」、すなわち急性上気道炎は、ほとんどの場合ウィルスによる上気道(鼻・のどなど)の炎症です。一部のウィルスを除きウィルスを駆逐する薬はなく、かぜの治療はうっとうしい症状、つまり熱・のどの痛み・せき・鼻水などを薬でやわらげるだけなのです。治しているのではありません。抗生物質は細菌専用ですからウィルスには無効です。「売薬で良くならないので来ました」「早く薬を飲めば早く良くなると思って来ました」いずれもご期待に応えることはできないのです。
人間の体は非常に高級にできています(人間に限りませんが)。機械とは全く違います。異常を察知してそれに対応する素晴らしい能力があります。体の一部が壊れれば直ちに復旧作業が始まります。外敵が入ってくるとそれを察知して排除にかかります。非常に複雑で高度なシステムが作り込まれているのです。普通のかぜならば自動的にウィルスを駆逐して数日で治ります(日数がかかることもありますが)。インフルエンザでも1週間で治ります、もちろん薬なしで。ウソだと思ったらネットで調べてみてください。本格的な病気であっても、自己修復力を最大限活用できるように薬や手術で補助をしていると言うのが本当なのです。「元気になったのは先生のおかげ」と言われる事がありますが、「それはあなたの実力です、私はほんのちょっと下から支えただけ」と反論してます。
そうは言ってもいろいろな場合があるので、なかなか良くならない時は診療所をお尋ねください。医者の存在価値は、単なるウィルス性のかぜか、それとも抗菌剤が必要な状態か、それとも他の病気の始まりかなどを判断することにあります。かぜの患者様が一切来なくなったら、診療所の売り上げは減ってしまいますし(苦笑)。上記の原則を守りつつ患者様に満足していただく、かぜの「適切な」診療というのは、意外に難しいものなのです。