(3)心房細動って知ってますか?

 心房細動は不整脈の一種です。不整脈ってなんなの?という声が聞こえてきそうですが、それはさておいて、治療が必要な不整脈としては心房細動が圧倒的に多いのです。
 心房細動になると脈がばらばらに打つようになります。ですから心房細動の治療は脈をきれいにする事のように思われるでしょうが、それよりもずっと大切な事があります。詳しい事情は省きますが、実は心房細動になると脳梗塞になりやすくなるのです(元巨人の長嶋がそうです)。そして心房細動による脳梗塞は規模が大きくなることが多く、一発で寝たきりになる事が珍しくありません。生命に危険が迫ることもあります。心房細動の患者様を診ていく上で一番大事なのは脳梗塞の予防なのです。
 幸い、心房細動による脳梗塞の予防法は確立されています。抗凝固療法といいまして、俗に言う血液サラサラの薬を飲む事です。血液サラサラの薬ならなんでもなんでも良いわけではなく、心房細動用の薬があります。以前はワーファリンといって「納豆を食べちゃいけない薬」が主でしたが、今は新世代の薬が中心で、薬を飲んでいても納豆は食べられるようになりました。ワーファリンよりも安全性が高く効果も確実で、やや値段が高いのですがお勧めです。
 心房細動のもう一つの困ったことは心不全になりやすくなることです。いつの間にか足がむくんできて、そういえば歩けば息が切れる、こんな具合です。体の中にひそかに余分な水が溜まっているのです。治療はというと、余分な水をおしっこにして体の外に捨てること、要は利尿剤の内服です。だた、心臓が本当に悪くてなる心不全とはまったく違っていて、薬をしっかり飲めば割に簡単に落ち着きます。薬を飲みながら元気に暮らしていくことが十分可能です。この場合も抗凝固療法は大変大事で、一緒に血液さらさら薬を飲んでいかないといけません。
 「不整脈」は全然珍しい物ではなくほとんどは治療の必要はないのですが、中に心房細動のような面倒な物が混じってきます。脈がおかしいな、胸がどきどきするな、と思ったら診療所にお寄りください。