(14)似てるかも インフルエンザと新型コロナ

 新型コロナウィルス感染症が全国に広がっています。「インフルエンザみたいに検査をどんどんやればいいじゃない、それでうまく行ってるんだから」と思う方は多いと思います。でもインフルエンザは本当にそれでうまく行ってるのでしょうか? だって毎年ばんばん検査して薬を出してもインフルエンザにかかる人はちっとも減らないじゃないですか。ワクチンだって毎年打たないとだめだし。大潟村に来て予防接種から診断治療まで一貫してやるようになってからは、「検査をして薬を出すだけでは何も解決しない」ということに気が付きました。
 インフルエンザにおいて大事なことは何か。それは患者をどう診断治療するかではなく、その地域への感染拡大をどう防ぐかなのです。基本的にインフルエンザは元気な人なら薬を飲まなくても1週間くらいで自然に治ります。極論すると治療は必要ない。しかし、一人の患者さんからどんどん他の人にうつります。熱が出たときにはもう周りの人にうつっていると思った方がいい。だから家庭や学校・会社などでどんどん広がります。ほとんど自然に治ると言っても大勢感染すれば重症の人も中にはでてきます。ですから、地域への感染拡大を防ぐことが一番大事なのです。ではすぐ病院に行って治療すればいいのか? 「熱があるから病院へ行く」ときにはもう人にうつしていますからそれでは遅い。薬をのんで熱が下がってもまだにうつります。病院で診断治療しても感染拡大は防げないのです。本当に必要なことは何でしょうか?
 手洗い・マスクは常識として、まずはワクチン接種です。ウィルス感染症予防の基本中の基本です。ワクチンを接種しても感染する人がいるのは周知の事実ですが、地域としてみればワクチン接種の効果は明らかです。インフルエンザワクチンは毎年接種する必要がありますが。
 次は「Stay home」です。WHOのインフルエンザの指針は「病院へ行け」ではなく「家にいろ」です。おかしいと思ったらまず家の外に出ない事。学生さんであれば「ちょっと調子悪いけどとりあえず学校へ行こう」ではだめ。「とりあえず学校を休もう」が正しい。日本では「体調が悪くても我慢して学校へ行く仕事をする」がカッコいいとされていますがとんでもない話です。具合が悪かったらサクッと休んでチャンと治す、これが大事です。
 怪しい症状があっても診療所には慌てて来なくて結構、熱が出て体がつらかったら来てください。でもその時は必ず電話して下さいね。いきなり正面玄関から堂々と入ってこない事! 他の患者さんにうつると困ります。来てくれた人には抗インフルエンザ薬を処方しますが、そのご利益は「解熱するまでの日数が平均で約1日短くなる」だけです。検査も必ずやるとは限らない。本物のインフルエンザは検査しなくても症状を聞けば解ります。逆に検査で陰性でも症状がそれらしければ薬を出します。あとは「熱が下がってもすぐには家から出るな」です。解熱しても2日間は人にうつります。
 この文章の内容はけっこう「新型コロナ」にも当てはまります。夏にインフルエンザの話を書いたのはそのためです。「自分が感染しない」ことは大事ですが「人に感染させない」ことはもっと大事です。